都立大学事件
(東京地平平成11年9月24日 判時1707号139頁 判夕 1045号228頁)
概要
原告Xと被告Yと被告Y2と同じ大学に籍を置いていた
XとYは学生自治組織を巡り対立するグループにそれぞれ所属しており、平成10年には実力衝突を起こし双方で負傷者を出した
Yは、以前よりY2が設置管理しているサーバーに自分が委員長を務める自治会のホームページを開設、上の件の顛末を書いた文書を掲載したが、Xが犯罪行為を犯したという印象を与える内容だった
これに対しXは名誉毀損に当たるとして抗議文を送った
しかしサーバーを管理するY2は、Yの書いた文書を存在は知っていたが削除はせず、抗議文の趣旨を伝えるのみにした
本訴されたのちは、Y2の手によって本件ホームページを閉鎖
Xは、Yに対しては名誉毀損、Y2に対しては名誉毀損の原因となる文書の存在を知りながらも速やかに削除しなかった、管理者は通常この類の内容はすぐ削除しなければならないがその義務を怠ったとして、YおよびY2に慰謝料や謝罪を求めた
半旨
裁判所は、Yの作成した文書の公開に名誉毀損があると認めた
Y2に関しては次のような見解を示した
ネットワーク管理者の削除権限は、被害者保護のためではなく当サーバーの信頼維持のためと認められる、なので被害者と関係があるからといってむやみに削除する必要はない
どのような場合には削除権限を発動してよいのか?
事柄の性質に応じて、条理に従い、個別的ないし類型的に検討すべきもの と示した
名誉毀損は、問題の情報が本当に名誉毀損に当たるか管理者が判断することは難しいなどの理由などにより
- 名誉毀損文書に該当すること
- 加害行為の態様が著しく悪質であること及び
- 被害の程度が甚大であると一目でわかる
などのような、明白である極めて特殊な場合にのみ削除権限を発動できると示した
本件は1ないし3が一見しても明白でないことから極めて特殊な場合に該当しないと判断した